The Wolf of Roppongi Street ~ウルフ・オブ・六本木ストリート~

駐妻には負けない!六本木通りの狼になりたい駐夫(ちゅうおっと)による金融、トライアスロン、シンガポール、グルメのブログ。

米国金利低下の謎

堅調な経済指標、資産買入規模の着実な縮小(テーパリング)、史上最高値を更新している米国株。これだけの材料がそろっているのに、米国金利の低下が止まりません。

29日のNY時間には10年米国債利回りが一瞬ながら2.4%(!)にタッチする場面も見られました。

 

米国ダウ株価指数(左軸)と10年米国債利回り(右軸)


tradingeconomics.com

 

米債金利低下の理由については、各国中銀関係者も頭を悩ませていますが、プロ市場参加者の間では以下のような要因が挙げられています。

 

①グレート・ローテーション(債券から株式への資金シフト)の巻き戻し

思い返せば2013年はグレート・ローテーションの年でした。株価指数が日々高値を切り上げていく中で、米長期金利が1.6%強の底値から3.0%までほぼ倍増するほど国債は売り込まれました。もちろんその大きな背景は、バーナンキFRB議長が5月22日の議会証言で、QE3の規模縮小に言及したことです。

株価も高値で引けた2013年、来る2014年の相場予想は株式強気、金利上昇が目白押しでした。それが米雇用統計、中国PMIの下振れによりいきなり幸先の悪いスタートとなり、コンセンサストレードに思いきり乗っかっていた投資家は年初早々もろにダメージを受け、リスク許容度が大幅に低下してしまいました。そのためそれまで株式にシフトさせていた資金をもう一度債券に戻すという動きがみられました。

さらに最近ではモメンタム株やラッセル2000などの小型株の急落で傷ついた個人投資家が株式を売って債券を買っていたということがETFの取引データから読み取れます。

 

米国債先物のショートカバー

米国金利上昇に賭けていたヘッジファンドや金融機関の思惑が外れ、泣く泣くポジションをスクエアに戻した、つまり国債を買い戻した(=金利低下)という説です。

29日に瞬間的に2.4%までつけにいった場面ではこの要因が大きかったのではないかと考えられます。

 

③中国による米国債購入

中国人民銀行は3月17日から人民元レートの日次許容変動幅を中心レートの上下2%に拡大しました。狙いとしては、ホットマネー流入の抑制、来るべき為替レート自由化に向けてのマーケットポジションの整理などがあると思われます。

簡単に言えば、これまで元というのはただただ上がり続けるものだったため、その動きを見越した中国の輸出業者や投機的プレイヤーが元高に全力でベット、とにかく中国元建てのものを買えばなんでも儲かるのでホットマネーの流入が止まらないという状況を打破するため、人民銀行が米ドルを買いまくり「お前らあんまり調子に乗るなよ!」と元を下落させたわけです。

これまでフリーマネーだとばかりにこの取引に賭け続けてきたプレイヤーもこれでちょっとやりにくくなりました。

 

USDCNYの推移(下に行くほど元高)


tradingeconomics.com

 

前置きが長くなりましたが、これがどう米国債に関係してくるのでしょうか?

人民銀行が大量に購入した米ドル、タンスに寝かせておくわけにもいかないですので、米国債を買ったのではないか?とささやかれているわけです。 

 

④欧州、英国の金利低下

ECBは6月5日の理事会で追加緩和(おそらく利下げ、SMPの不胎化停止、Funding for Lendingなど)に踏み切ると見られており、ユーロ圏各国の金利は軒並み低下しています。

また利上げの急先鋒と見られてきたBOEも全然利上げを急いでいないことが明らかになりましたので、GBP金利も低下しています。

アメリカはあんまり関係ないんじゃ?という気もしますが、やはりドイツ国債金利が下がってくると、米国債が相対的に金利高くて魅力的!みたいなレラティブバリューの視点が入ってくることもあり、米国金利も引きずられているようです。

 

地政学リスクの増大による「質への逃避」需要

ウクライナ、ロシア情勢、タイクーデターなど。根っこにはあるかもしれませんが、直近の金利低下を説明するにはちょっとタイミングが合わないかもしれませんね。 

 

⑥米国潜在成長率の低下

 PIMCOの「債券王」ビル・グロース氏が中立FF金利(景気を加速も減速もさせないような中立的な政策金利水準)が2%と発言、バーナンキさんも4%は下回るとか口を滑らせてしまったりして、ちょっと炎上中です。米アトランタ地区連銀のロックハート総裁は依然4%として火消しにやっきになっています。

景気が回復しても結局成長率がリーマン前のような水準には戻らないから金利の落ち着きどころも低くなるよね、という議論です。

 

⑦米国期待インフレ率の低下

 こちらもざっくり名目長期金利=名目成長率+インフレ率+リスクプレミアムと考えると、その要因のうちの一つが下がって来てるよねという議論。

 

⑧米株高は幻想

「スマートマネー」は株から債券にシフトしているので、本当は株安、債券高にならないといけないが、米国企業の自社株買いが過去最高水準にあるため株価が押し上げられているという議論。 この考えで行くと、株高・債券高も両立し得る。

 

⑨「噂で売って事実で買う」

 最初に示した米国債金利のチャートを見ていただくと、2013年に2度3%に接近したことがわかります。テーパリング開始がほぼ確実視されていたにもかかわらず肩透かしを食らった9月とようやく本当にテーパリングが開始された12月です。

しかし12月のテーパリング開始後、金利はなぜか低下しています。

マーケットは材料を先回りして織り込んでしまうため、実際にその事実が決定されると利食いが入るということです。

「噂で買って事実で売る」という株のことわざがあるのですが、今回の米国債のケースでは「噂で売って事実で買う」だったようです。

 

 

米国株と米金利の乖離はどこまで続くのか?

どのようにして解消されるのか?

米国株ー>日本株、米金利ー>ドル円の影響力は非常に大きいため、日本の投資家のみなさんもこの2つの指標の行く末から目が離せません。