The Wolf of Roppongi Street ~ウルフ・オブ・六本木ストリート~

駐妻には負けない!六本木通りの狼になりたい駐夫(ちゅうおっと)による金融、トライアスロン、シンガポール、グルメのブログ。

1株当たり当期純利益(EPS)の錬金術

問題

A社が株式交換によりB社を買収します。
交換比率は現在の株価に従って、B社株2株につきA社株1株を割り当てることとします。
買収完了後の新会社α社のEPSはいくらになるでしょうか?

ただし、買収による業績向上・悪化はゼロとします。

  A社 B社
総利益 1,000,000 1,000,000
株数 1,000,000 1,000,000
EPS 1.00 1.00
PER 20.00 10.00
株価 20.00 10.00

 

回答

1.33円

  A社 B社 α社
総利益 1,000,000 1,000,000 2,000,000
株数 1,000,000 1,000,000 1,500,000
EPS 1.00 1.00 1.33
PER 20.00 10.00  
株価 20.00 10.00  
交換比率 2.00    
時価総額 20,000,000 10,000,000  

 

驚くべきことに、総利益と株数が全く同じA社とB社が合併することにより、両社の実態は全く変わっていないにもかかわらず、1株当たり当期純利益(EPS)が33%も上昇しました。

 

なぜこんなことが起きたのでしょうか?

 

鍵は両社の株式市場における評価、PERの違いです。

A社のPERはB社の2倍であったため、総利益は同じであるにもかかわらず、A社の株価はB社の株価の2倍であり、株式交換にあたって交付する株式は500,000株で済みました。

 

以下の計算式から明らかなように、買収によって分子の総利益は2倍になりましたが、分母の株数は1.5倍にしか増加しなかったため、2/1.5-1=33%のEPS増加が起こったわけです。

 

α社のEPS=(A社の総利益+B社の総利益)/(A社の株数+B社の株数/2

 

さて、話はここにとどまりません。

 

問題

合併後のα社の株価はいくらになるでしょうか?

ただし、α社は引き続きA社と同様PER20倍で評価されるものとします。

回答

26.67円

  A社 B社 α社
総利益 1,000,000 1,000,000 2,000,000
株数 1,000,000 1,000,000 1,500,000
EPS 1.00 1.00 1.33
PER 20.00 10.00 20.00
株価 20.00 10.00 26.67
交換比率 2.00    
時価総額 20,000,000 10,000,000 40,000,000

1株当たり当期純利益(EPS)が33%上昇し、PERが20倍で不変とすると、株価=EPS*PERより、株価も33%上昇します。

 

これに伴い、時価総額2千万円のA社が時価総額1千万円のB社を買収したことにより、α社の時価総額は4千万円となっています。

 

両社の経済実態は何も変化していないにも関わらず、時価総額が1千万円増加しました。

 

これこそが、アメリカ経済における黄金の1960年代、コングロマリットブーム時に行われていた錬金術のエッセンスです。

 

PERが高い企業(株式市場で人気のあるファッショナブルな業界に属する)が高い株価を活かし株式交換によってPERの低い企業(株式市場で人気のない地味な業界に属する)の買収を繰り返す

→計算上、1株当たり当期純利益(EPS)が上昇する

→株式市場が新しいEPSを株式市場で人気のあるファッショナブルな業界のPERで評価する

→株価および時価総額が上昇する

 

半世紀前の事例ですが、つい最近も聞いたことがある話ではないでしょうか?「M&Aによって成長を加速~」「積極的な企業買収によるシナジー効果が~」などなど。

 

シナジーなどまったくなくてもEPSを上昇させることはできるのです。

 

株式投資の入門書(より高レベルの専門書でも!)では、1株当たり当期純利益(EPS)をすべてのファンダメンタル分析の根本においている場合が多いですが、このような錬金術が存在することには注意を払っておきましょう。

 

 

*買収によるEPSの上昇率は、以下の計算式で求めることができます。

計算が得意な方はチャレンジしてみてください。

{(B社総利益/A社総利益)-(B社時価総額/A社時価総額)}/(1+B社時価総額/A社時価総額

 

時価総額=総利益*PER=EPS*株数*PERに注意です。

 

 

 

 

 

 

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